2022年10月30日
習近平の「歴史的責務」に対抗した安倍晋三のセキュリティダイアモンド構想
2016年、習近平は、軍幹部との会議で「沖縄県尖閣諸島や南シナ海の権益確保は我々世代の歴史的重責だ」と述べ、習近平自身の最重要任務と位置付けていたという記事が目に留まった。6年前の発言が何故に今になって公表されたのか。
この「歴史的責務」との習近平発言から3ヶ月後、中国人民軍の軍艦が初めて尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。こうした事実をしても、尖閣諸島の歴史的経緯と主権が我が国に在るのは明らか。中共は単に地下資源などの盗掘が目的である。
「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド」を訴えたのは故安倍晋三。この構想は習近平の「歴史的責務」発言より3年前に語られたものである。以下列記する。
2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、
私は「二つの海の交わり」(1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコー
が著わした本の題名から引用したフレーズ)について話し、
居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て
私は自分の発言が正しかったことを益々強く確信する様になった。
太平洋に於ける平和、安定、航海の自由は、
インド洋に於ける平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。
発展の影響は両者を嘗てなく結び付けた。
アジアに於ける最も古い海洋民主国家たる日本は、
両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。
にも拘わらず、益々、南シナ海は「北京の湖」となって行くかの様に見える。
アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく
南シナ海も中国の内海となるだろうと言う様に。
南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が
基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母が
よく見かけられる様になるだろう。
中国の隣国を恐れさせるに十分である。
これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、
日本が屈してはならない理由である。
軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も
日本の領海及び接続水域に進入してきた。
だが、この様な“穏やかな”接触に騙されるものはいない。
これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、
中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。
もし、日本が屈すれば、南シナ海は更に要塞化されるであろう。
日本や韓国の様な貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は
深刻な妨害を受けるであろう。
両シナ海は国際海域であるにも関わらず日米両国の海軍力が
この地域に入ることは難しくなる。
この様な事態が生じることを懸念し、
太平洋とインド洋を跨ぐ航行の自由の守護者として、
日印両政府が共により大きな責任を負う必要を私はインドで述べたのであった。
私は中国の海軍力と領域拡大が
2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、
それは間違いであったことも告白しなければならない。
東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、
国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の
戦略的優先課題としなければならないことを意味する。
日本は成熟した海洋民主国家であり、
その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。
私が私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、
インド洋地域から西太平洋に広がる
海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。
対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。
つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。
(世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端に
アンダマン・ニコバル諸島を擁し、
東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。
日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、
アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。
製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として
使うことを選んで以後、
インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。
私はアジアのセキュリティを強化する為
イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。
海洋民主国家たる日本の世界に於ける役割は、
英仏の新たなプレゼンスと共にあることが賢明である。
英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、
ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見い出している。
私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、
小規模な軍事演習にも加わらせたい。
タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、
何れ重要性を大いに増してくるであろう。
とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。
米国のアジア太平洋地域に於ける戦略的再編期にあっても、
日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、
米国もまた日本を必要としているのである。
2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、
直ちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、
60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である。
私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が
多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。
然し、日中関係を向上させるなら、
日本は先ず太平洋の反対側に停泊しなければならない。
というのは、要するに日本外交は民主主義、法の支配、
人権尊重に根ざしていなければならないからである。
これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。
2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、
それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。安倍晋三。(引用終わり)
尖閣諸島とは、「魚釣島」「南小島」「北小島」「久場島」「大正島」と岩礁からなる領土をいう。国際法上、「無主地先占」(持ち主のいない土地を占有した国に、その領有権を与えるという考え方)に基いて、10年に及ぶ現地調査の結果を経て、明治28年1月14日の閣議決定に拠って沖縄県に編入された。
尖閣諸島は世界各地の地図の上でも、中共や台湾の教科書でも日本の領土として公式に認められている。だが、昭和43(1968)年6月、国連アジア極東委員会が、尖閣諸島周辺の東シナ海大陸棚に石油・天然ガスが埋没している可能性を報告した。
この国連アジア極東会議の報告後に中共や台湾は唐突に尖閣諸島の領有権を主張し、国際法上の手続きも無しに地図を書き換え、1992年に自国領に組み入れた。
そんな中で、昭和47(1972)年に日中正常化交渉が行われることとなった。当時の田中角栄首相は、あろうことか尖閣諸島の領有権に関して「棚上げ合意」した。
明治政府の閣議決定を無視して棚上げ合意した、田中のこうした容共姿勢と腰抜け外交が、我が国の国益を大きく損う元凶となっているのはいうまでもない。
我が国を取り巻く環境は決して好ましいものではない。南シナ海の西沙諸島(パラセル)を中共は1974年以降、実効支配すると共に人工島を建設、フィリピンやベトナムとの間でも緊張が高まっているのは余程のバカじゃない限り理解している。
我が国では尖閣諸島の問題はそれ相応に報道しているので、詳しくはないが国民の尖閣諸島問題への認識も広がってはいるが、南シナ海の紛争となるとマスコミは中共に気遣って作為的な記事を垂れ流し、国民の危機意識なんぞ所詮は対岸の火事。
そんな中で「アジアに於ける最も古い海洋民主国家である我が国が、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである」との故安倍首相の構想と主張は刮目に値するものであり、国民共通の認識として共有するべきである。
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この「歴史的責務」との習近平発言から3ヶ月後、中国人民軍の軍艦が初めて尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。こうした事実をしても、尖閣諸島の歴史的経緯と主権が我が国に在るのは明らか。中共は単に地下資源などの盗掘が目的である。
「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド」を訴えたのは故安倍晋三。この構想は習近平の「歴史的責務」発言より3年前に語られたものである。以下列記する。
2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、
私は「二つの海の交わり」(1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコー
が著わした本の題名から引用したフレーズ)について話し、
居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て
私は自分の発言が正しかったことを益々強く確信する様になった。
太平洋に於ける平和、安定、航海の自由は、
インド洋に於ける平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。
発展の影響は両者を嘗てなく結び付けた。
アジアに於ける最も古い海洋民主国家たる日本は、
両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。
にも拘わらず、益々、南シナ海は「北京の湖」となって行くかの様に見える。
アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく
南シナ海も中国の内海となるだろうと言う様に。
南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が
基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母が
よく見かけられる様になるだろう。
中国の隣国を恐れさせるに十分である。
これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、
日本が屈してはならない理由である。
軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も
日本の領海及び接続水域に進入してきた。
だが、この様な“穏やかな”接触に騙されるものはいない。
これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、
中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。
もし、日本が屈すれば、南シナ海は更に要塞化されるであろう。
日本や韓国の様な貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は
深刻な妨害を受けるであろう。
両シナ海は国際海域であるにも関わらず日米両国の海軍力が
この地域に入ることは難しくなる。
この様な事態が生じることを懸念し、
太平洋とインド洋を跨ぐ航行の自由の守護者として、
日印両政府が共により大きな責任を負う必要を私はインドで述べたのであった。
私は中国の海軍力と領域拡大が
2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、
それは間違いであったことも告白しなければならない。
東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、
国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の
戦略的優先課題としなければならないことを意味する。
日本は成熟した海洋民主国家であり、
その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。
私が私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、
インド洋地域から西太平洋に広がる
海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。
対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。
つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。
(世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端に
アンダマン・ニコバル諸島を擁し、
東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。
日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、
アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。
製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として
使うことを選んで以後、
インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。
私はアジアのセキュリティを強化する為
イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。
海洋民主国家たる日本の世界に於ける役割は、
英仏の新たなプレゼンスと共にあることが賢明である。
英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、
ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見い出している。
私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、
小規模な軍事演習にも加わらせたい。
タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、
何れ重要性を大いに増してくるであろう。
とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。
米国のアジア太平洋地域に於ける戦略的再編期にあっても、
日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、
米国もまた日本を必要としているのである。
2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、
直ちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、
60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である。
私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が
多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。
然し、日中関係を向上させるなら、
日本は先ず太平洋の反対側に停泊しなければならない。
というのは、要するに日本外交は民主主義、法の支配、
人権尊重に根ざしていなければならないからである。
これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。
2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、
それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。安倍晋三。(引用終わり)
尖閣諸島とは、「魚釣島」「南小島」「北小島」「久場島」「大正島」と岩礁からなる領土をいう。国際法上、「無主地先占」(持ち主のいない土地を占有した国に、その領有権を与えるという考え方)に基いて、10年に及ぶ現地調査の結果を経て、明治28年1月14日の閣議決定に拠って沖縄県に編入された。
尖閣諸島は世界各地の地図の上でも、中共や台湾の教科書でも日本の領土として公式に認められている。だが、昭和43(1968)年6月、国連アジア極東委員会が、尖閣諸島周辺の東シナ海大陸棚に石油・天然ガスが埋没している可能性を報告した。
この国連アジア極東会議の報告後に中共や台湾は唐突に尖閣諸島の領有権を主張し、国際法上の手続きも無しに地図を書き換え、1992年に自国領に組み入れた。
そんな中で、昭和47(1972)年に日中正常化交渉が行われることとなった。当時の田中角栄首相は、あろうことか尖閣諸島の領有権に関して「棚上げ合意」した。
明治政府の閣議決定を無視して棚上げ合意した、田中のこうした容共姿勢と腰抜け外交が、我が国の国益を大きく損う元凶となっているのはいうまでもない。
我が国を取り巻く環境は決して好ましいものではない。南シナ海の西沙諸島(パラセル)を中共は1974年以降、実効支配すると共に人工島を建設、フィリピンやベトナムとの間でも緊張が高まっているのは余程のバカじゃない限り理解している。
我が国では尖閣諸島の問題はそれ相応に報道しているので、詳しくはないが国民の尖閣諸島問題への認識も広がってはいるが、南シナ海の紛争となるとマスコミは中共に気遣って作為的な記事を垂れ流し、国民の危機意識なんぞ所詮は対岸の火事。
そんな中で「アジアに於ける最も古い海洋民主国家である我が国が、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである」との故安倍首相の構想と主張は刮目に値するものであり、国民共通の認識として共有するべきである。
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《会費&御支援》みずほ銀行 郡山支店 普1464729 ニッポンロンダンクラブ。年会費一般30000円(月2500円)。法人120000円。協賛会員は300000円~。
cordial8317 at 08:34│Comments(0)
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