「憲法記念日」より「新憲法の制定を祈念する日」が相応しい「三権分立(立法・行政・司法)が侵される」という声

2020年05月09日

百田尚樹の靖國神社の会報への投稿を読んでの雑感

 今月の靖國神社の会報「靖國」に、作家の百田尚樹が投稿してたので読んでみた。「靖國神社は国民の神社である」というタイトルで、流石に作家らしく読み易い文章だが、中身は今どきの保守派や自称・愛国者が喜びそうな内容だった。

 百田は、中曽根康弘の靖國神社への参拝を批判した朝日新聞の責任を問うてるが、それよりも問題は中曽根の昭和60年8日15日の参拝だろう。歴代続いた例大祭への参拝ではなく、中曽根は敢えて8月15日に公式参拝した。

 百田は「終戦記念日」との名称を使ってるが、8月15日は「戦没者を追悼し平和を祈念する日」であり終戦記念日ではない。終戦記念日とはGHQの洗脳である。

 当時の松平宮司は、中曽根のこの日の参拝を「手水もせず、御祓いも受けず、玉串奉奠もせず、ニ礼ニ拍手一礼もしない、黙祷だけという、神道否定、神社冒涜の異様な光景だった」と断じ「人の家に泥靴で踏み込む様な人」回想している。

「遺族を参道に並ばせ、非常に芝居がかった演出、驚いたのはその横に4人のボディガードを連れて行動したんですね。うちの神様方というのは皆手足四散して戦場で亡くなられた方が大部分です。そこへ参拝するのに自分のみ安全を謀るSPを伴うというのは無礼、非礼の極みという他ありません」とも語っている。

 8月15日に靖國神社に初めて参拝したのは三木武夫であり、その後、中曽根康弘が続いた。8月15日の靖國参拝を利用したのが小泉純一郎。安倍晋三も終戦記念日に参拝出来なかったことを後悔してるが、何れも国賊ばかり。

 一昨年の靖國会報に、保守派の重鎮でもある小堀佳一郎が「終戦の詔勅奉戴日に寄せて」というタイトルで陛下の御親拝を切望し、「終戦の詔勅奉戴日こそが御親拝に最も相応しい日である」との論文を寄稿したのは記憶に新しい。

 大東亜戦争終結に関する詔勅の渙発は二日前の13日であり、内閣が署名し公布したのが翌14日。そして15日は録音による「玉音放送」が流された日だ。

 国民の多くは玉音放送があった8月15日を「終戦記念日」と称し、保守派や右翼、軍事マニアらが靖國に参集しパフォーマンスを繰り広げる。そうした風潮に便乗するかの様な「終戦記念日に御親拝を」というのには違和感しかない。

 小堀や百田らは、昨今の保守ブームの火付け役といって好いだろう。自称・愛国者らにはこうした勇ましい論文はウケが好いのだろうが、近年の8月15日の動向に眉を顰めてる国民は少なくなく、正しく靖國の贔屓の引き倒し。

 こうした論説は、なんちゃって保守や自称・愛国者を喜ばせるが、一方で世論を撹乱させる。「生前退位」が実行され様とした際も、結局退位阻止出来なかったのは、保守派の中途半端な認識と論説が反天皇勢力に付け入られた。

 靖國神社は、明治2年、明治天皇の思し召しにより創建された。その合祀対象は、尊王攘夷派公家の中心的存在であった三条実美が関わり、祭文には「皇軍に役立ちして賊徒等を討たん其の義に・・・命果てぬる輩」と明示している。

 この祭文の原則がある限り、会津藩や我が二本松藩、西郷軍関係者などが本殿に祀られることはなく、未来永劫 「賊軍」の汚名が灌がれることはない。

 靖國神社は百田が言う様な「日本の為に戦って命を落とした人々が祀られている」という認識は根本的に間違っている。「天皇の為に」というのが正しく、京都守護職として奉公した会津藩が賊軍というのは不条理そのもの。

 抑々、三条実美は、会津・薩摩を中心とする公武合体派の改革に由り「七卿落ち」となった一人であり、維新後は明治新政府に重用されるが、靖國神社とは明治天皇の思し召しとは程遠い、長州の遺恨で創られた社でもある。

 靖國神社が戦没者の顕彰を重んじる神社であるなら、賊軍とされた方々を「鎮霊社」という別なカタチで祀ることと本殿に祀ることとでは、どちらが時代に即して天皇(すめろぎ、すめらぎ)が顕現される道なのか。

 死者の選別を続けることは日本人の死生観にもそぐわないし、創建の趣旨でもある「顕彰」からも逸脱している。所謂「A級分祀論」も然り。

 百田は大東亜戦争での逸話を語って靖國神社の正統性を語っているが、最近の靖國神社は幕末から明治維新という大業と開国に当たっての犠牲ということが忘れ去られ、大東亜戦争を殊更に正当化する主張が目立つ。

 靖國神社側が、8月15日の保守派やインチキ愛国者らの集団参拝に苦言を呈することなく受け容れてる姿は、陛下の御親拝が遠退くばかりか、神社庁との主導権争いから宗教法人となった明治神宮と同じく営利主義にしか感じない。

 官軍である長州閥の下で創られた靖國神社の在り方を見直す時期に来ていると思う。先ずは鎮霊社という死者の選別を止め、与野党有志で「靖國法案」を提出し宗教法人格を外し、「国民の神社」として国家護持を実現させよ。

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cordial8317 at 07:10│Comments(0)

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