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2024年05月14日

日本人必読の名著である「言志四禄(佐藤一斎)」に学ぶ

    少(わか)くして学べば、即ち壮にして為すことあり
    壮にして学べば、即ち老いて衰えず
    老にして学べば、即ち死して朽ちず。(言志晩録六十条)

 誰もが知るこの有名な詩は佐藤一斎の「言志四録」の一節「三学戒」の訓えである。生涯に於いて、学ぶことの重要性を説いたものだ。 「言志四録」とは、「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋(てつ)録」の四書の総称のこと。

 佐藤一斎の名を知らなくても、その門下生の多さに驚く。朱子学と陽明学を教えた一斎の門下生は数千人に及び、朱子学としては、愚生の地元郡山が生んだ偉人、安積艮斎(あさかごんさい)始め、大橋訥庵、中村敬宇(正直)などがいる。

 陽明学者としては、佐久間象山を始め、山田方谷、横井小楠、渡辺崋山。 その佐久間象山門下から勝海舟、吉田松陰、小林虎三郎、坂本竜馬などの傑物が輩出し、吉田松陰門下生には高杉晋作、伊藤博文以下錚々たる面々が連なっている。

 維新の立役者であった西郷隆盛は、一斎の直接の弟子ではなかったが「言志四録」を座右の銘としていた。「言志四録」の魅力は箴言が多いところだろう。

 例えば、「人が学問をするに当たって師とすべきものは、『天』『人』『経』の三つがあると教える。その中で最上は天を師とすることであり、次いで立派な人を師として習い、その次は賢人の書を師として学ぶことである。(言志録・二条)」

 愚生に師と呼べる人はいなかったし、天を師とすることなど無理。せめて好い書に触れて、またその人物に近付こうと努力する。「人真似上手は個性を創造する」という様に、憧れの人の立居振る舞いや思想などを真似てみることも大事である。

 イチローにしろ、大谷翔平にしろ、最初から一流ではない。懸命に学ぶ上で、理想とするプレーを真似たに違いない。そして自分のものとして創造し今がある。

「全て事業を為すには、天の意に従う敬虔な心を持つ事が必要である。功績を人に誇示し、自分の存在をひけらかす気持ちが有ってはならない。(同三条)」 。武士道で一番嫌われるのは「衒学」という。つまり、ひけらかすことは武士道に悖る。

「人は生まれつき『仁』『義』『礼』『智』『信』を備えているのだから、この五常を極め尽くすべきである。また『孝』『悌』『忠』といった職分が有るのだから、これらを当然の義務として実践すべきである。(同八条)」という。

 現在はその性善説が怪しい。日本国憲法でも「平和を愛する諸国民の公正と信義」を重んじているが、生まれつき五常が備わっていない日本人が幅を利かせる。

 同三十条では、「自分の過失を責めることに厳しい人は他人の過失を責める場合も厳格であり、他人を思いやることの寛容な人は自分にも寛容である。教養の有る出来た人は、自分を責める時は厳しく、他人を責める場合は寛容である」と説く。

 我が国の政治の世界は全くこの逆で、他人を責めるのは厳しく、自分には大甘な判断ばかり。「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録」は千三百三十条もあり、限がないので、政治家の心得として知っておくべき五つの事項を記そう。

 第一は軽量で、財政上の軽量を計ること。
 第二は時勢で、時代の動向を見抜いて事を行うこと。
 第三は寛容で、人に接するに心が広く温厚なこと。
 第四は鎮定で、争乱を鎮めて平和を保つこと。
 第五は寧耐で、心を平静にして、よく忍耐すること。

 そして、「賢明な人を採用し、心の曲がった人を遠ざけ、農業を奨励し、税金を軽くし、贅沢を戒め、倹約を重んじ、老人を大切にし、幼児を慈しむなど、何れも必要なことで誰もが知っていることである。(言志後録・七九条) 」と説く。

 言志耊録に「寒暑、栄枯は天地の呼吸なり、苦楽、栄辱は人生の呼吸なり」と在る。人生は良い時もあれば悪い時もある訳で、だからこそ人生は愉しいのだ。

 人間関係というのは、往往にして良い時だけは付き合うが、悪い時や悪い部分を指摘されたりすると、徐々に離れて行く場合が多い。良い時も、悪い時も同じ態度で接してくれた人だけ信じられる。古典は人生での大事な価値を教えてくれる。

 夫夫の年代に合わせ、悩んだ時や、人生に疲れた時などに一斎の書を読むと元気を与えて貰えるに違いない。「言志四録」もまた日本人必読の名著である。

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cordial8317 at 06:53│Comments(0)

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