「蛍の光」を歌えば、日本の歴史や先人の営為が見えて来る徒然日記「確定申告とわかさぎ釣り」

2011年03月03日

大事をなそうと思ったら小さな事でも怠らず努力することだ(二宮尊徳)

 二宮尊徳ほど、戦前と戦後の評価が二分された人物も稀だろう。今の時代「尊徳」の教えは忘れさられ、自分の「損得」ばかり勘定する日本人が多くなった。

 戦前の「修身」では尊徳の唱えた「勤倹・分度・推譲」の思想が教えられ、模範的な倫理観とされた。だが、戦後GHQに拠って尊徳の教えは一掃されてしまった。

 学校教育の荒廃が叫ばれて久しい今こそ、尊徳の教えを子供達に教えて行くべきではなかろうか。尊徳の生立ちや業績を書いた「報徳記」や、尊徳の言葉を記した「二宮翁夜話」が有名だが、二宮翁夜話の中から幾つか記述してみたい。

【積小為大】「大事をなそうと思ったら、小さな事でも怠らず努力することだ。全ての物事は小が積もって大になる。ところが、小人物に限って最初から大きな事を欲し、小さな事を怠るものだから、結局は何も出来ないで終わっている」(十四条)。この哲理を見出したのが弱冠17歳というから驚くしかない。

【心田開発】「土地の荒廃の本は人間の心が荒れているから起こるのである。私の道では先ず心の荒れを耕すこと。心の荒廃を耕したら、次は田畑の荒地を開き、水を引き、苗を植えて、熟田にしていけば、自ずから国が富強になることは間違いないのだ」(続二十四話)。領地は荒れ果て農民たちは惰眠を貪り誰も働こうとしない。そこで尊徳は、再建に取り組む前に農民たちの心を耕すことを試みたという。

【至誠実行】「私のやり方は至誠と実行有るのみである。私は才知とか弁舌など尊ばない。才知弁舌は人には効き目が有るかも知れないが、鳥獣、草木を騙すことは出来ない。そこへいくと私の方法は至誠と実行だけだから、米麦でも野菜でも、蘭でも菊でも、皆に通じてこれらを繁栄させることが出来る。凡そ世の中のものは、知識や学問が有っても、至誠と実行が無かったら何事も成就しないことを知らなければならない」(百三十九話)。尊徳の実践哲学の根本ともいえる教えである。

【勤・倹・譲】「私の報徳の道は、勤・倹。譲の三つである。勤とは、衣食住に利用出来るあらゆるものを骨身惜しまず生産すること。倹とは、その作り出したものを有効に活用し無駄にしないこと。そして譲とは、衣食住の三つを他に譲り及ぼすことである。但し、この譲には色々有って、今年のものを来年の為に蓄えるのも譲、子孫に譲ったり、親戚、朋友、郷土、国家の為に譲るのも譲である。その人の分限に於いて出来るだけ多くを譲る様にしなければならない。勤・倹・譲の三つは、鼎の三本足の様なもので、一本でも欠けたら報徳の道は立たないことになる」(続四十三話)。報徳実践の三大哲学あり「勤労」「分度」「推譲」の実践として教えられている。

 こうした尊徳の教えは、明治資本主義の創成期に活躍した渋沢栄一や安田善次郎、御木本幸吉、松下幸之助など多くの実業家に影響を与えて行くのである。

cordial8317 at 02:36
「蛍の光」を歌えば、日本の歴史や先人の営為が見えて来る徒然日記「確定申告とわかさぎ釣り」